
急に涼しくなる秋口は要注意!季節の変わり目に気をつけたい血圧と心臓のケア
9月下旬を迎え、これまでの厳しい残暑から一転、朝晩を中心にグッと冷え込む日が増えてきました。過ごしやすく爽やかな季節の到来ですが、実は循環器(心臓や血管)にとっては負担がかかりやすい時期でもあります。
今回は、気温が下がり始めるこの時期に患者さんに意識していただきたい生活の注意点をお伝えします。
なぜ「急な冷え込み」で心臓・血管に負担がかかるのか?
人間の体は、寒さを感じると熱を逃がさないように末梢の血管をキュッと収縮させます。その結果、以下のような変化が起こります。
- 血圧の急上昇: 血管が狭くなるため、夏場より血圧が上がりやすくなります。
- 心臓への負荷増大: 高い圧力で血液を送り出す必要があり、心臓に余分な力が入ります。
- 血管事故のリスク上昇: 狭心症や心筋梗塞、不整脈などの発症リスクが高まります。
- インフルエンザなどの感染症をきっかけに心不全が悪化
特に「夏場は血圧が安定していたから安心していた」という方ほど、秋口の急な血圧上昇に気づきにくいため注意が必要です。
秋口を元気に過ごすための「4つの生活注意点」
1. 朝晩の「温度差(寒暖差)」を減らす工夫を
日中と朝晩の寒暖差が大きい時期です。羽織りもの(カーディガンやストールなど)を活用し、こまめに脱ぎ着して体感温度を一定に保ちましょう。特に、早朝のゴミ出しや散歩などでパジャマや薄着のまま外へ出るのは避け、一枚羽織ってから出る習慣をつけてください。
2. 入浴時の「ヒートショック予備軍」に気をつける
冬ほど意識されないかもしれませんが、脱衣所やお風呂場がひんやりしてくる時期です。
- 脱衣所や浴室をあらかじめ少し暖めておく
- お湯の温度は40度以下のぬるめにする
- 熱いお湯にいきなり入らず、手足から掛け湯をする といった工夫で、入浴時の急激な血圧変動を防ぎましょう。
3. 水分補給を怠らない
涼しくなると喉の渇きを感じにくくなり、知らず知らずのうちに水分不足(かくれ脱水)になりがちです。体が脱水状態になると血液がドロドロになり、血栓(血管内の血の塊)ができやすくなります。喉が渇いていなくても、起床時や入浴前後など定期的な水分補給を続けましょう。
4. 朝晩の家庭血圧測定を習慣づける
季節の変わり目は、血圧の自己管理が一番の予防策です。「朝(起床後1時間以内・排尿後・朝食前)」と「晩(就寝前)」に毎日測り、手帳やアプリに記録しておきましょう。夏に比べて数値が上がっていないか確認することが大切です。
こんな症状があれば、早めにご相談ください
- いつもより血圧が明らかに高い状態が続いている
- 階段や坂道を上ったときに胸の圧迫感や息切れを感じる
- 動悸(胸のドキドキ)や脈の乱れが気になる
- 朝起きたときに頭が重い、めまいがする
当院では、季節ごとの血圧管理やお薬の調整、心機能のチェックを行っています。少しでも気になる変化や不安な点がありましたら、どうぞお気軽にご受診ください。
実りの秋を元気に、健やかにお過ごしいただけますようスタッフ一同サポートしてまいります。
10月1日よりインフルエンザ、コロナウイルスのワクチン接種を開始しております。
特に心臓病で加療中の患者様には接種を受けられることをお勧めいたします。接種は予約不要ですのでお気軽にお申し出ください。
心不全の患者様が増加しています
心不全の予防と早期発見にために
1. 心不全のステージと早期予防の重要性
- 高齢化に伴い心不全患者が急増しており、入退院を繰り返すことで生活の質(ADL)が低下し介護が必要になるケースが多いため、発症前の対策がとても重要です。
- 心不全は進行度に応じてステージ分類されており、症状が出現する前(ステージA・B)の段階でリスクを正しく評価し、発症(ステージC)を予防することが求められます。
2. 心不全の診断と早期発見の目安
- 心不全リスク段階(ステージA): 高血圧、動脈硬化、糖尿病、慢性腎臓病(CKD)、肥満などの生活習慣病があるけれど、心臓の異常や症状はない状態です。見逃しを防ぐため、少なくとも1年に1回は血液検査で「BNP」または「NT-proBNP」という心臓の負担を示す数値を測定することが推奨されます。
- 前心不全段階(ステージB): 血液検査でBNPが35 pg/mL以上、またはNT-proBNPが125 pg/mL以上の場合や、検査で心臓の構造や動きの異常(心肥大、弁膜症、心筋梗塞の跡、心房細動など)が見つかった状態です。この段階では、少なくとも1年に2回の数値測定や、定期的な心電図・胸部X線検査を行います。
- 専門医との連携: ステージB(前心不全)と判断された場合は、心不全への進行を防ぐために早期の対応が必要です。一度は専門医への受診をお勧めします。
- 心不全を疑うサイン(ステージCへの移行): 体の異変として「疲れやすい」「だるい」「息切れ」「夜間に息苦しくて目が覚める」「足のむくみ」「1週間に2kg以上の急激な体重増加」などの症状や所見がみられた場合は、心不全を発症している可能性があるため、速やかに循環器専門医の受診が必要です。心エコーなどの精密検査や適切な治療を開始する必要があります。これらの症状が気になる方は気軽に当院にご相談ください。
3. 心不全の発症を防ぐ予防と治療
- 健康的な生活習慣の維持: ステージA・B共通の基本として、定期的な運動、適切な体重管理(BMI25未満の維持)、減塩(食塩1日6g未満)や野菜・果物を中心とした食生活、禁煙、節酒、感染予防などを心がけます。
- 高血圧の厳格な管理: 診察室血圧130/80 mmHg未満(家庭血圧125/75 mmHg未満)を治療目標とし、生活習慣の改善で達成できない場合は、早期から適切な降圧薬(Ca拮抗薬、ARB/ACE阻害薬、利尿薬、β遮断薬、ARNIなど)を組み合わせてしっかりと血圧を下げます。
- 糖尿病の治療: 糖尿病は心不全リスクを2〜4倍に高めるため、低血糖を避けつつ、心不全の予防効果が証明されているお薬(SGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬など)の投与を検討します。
- 慢性腎臓病(CKD)の治療: 腎機能の低下や蛋白尿の有無に応じて、ACE阻害薬/ARBやSGLT2阻害薬、フィネレノンなど、腎臓と心臓の双方を守る効果があるお薬を適切に併用します。
- 持病(心疾患)の管理: 心筋梗塞の既往がある場合は再発予防のための薬物治療(抗血小板薬やスタチンなど)を行い、心臓の動きが低下している場合はβ遮断薬などを導入します。弁膜症は定期的な心エコーで手術のタイミングを評価し、心房細動がある場合は、早期から専門医と連携して抗凝固療法やアブレーション治療などを検討し、心不全や脳卒中のリスクを下げます。